ARTOColors. - バラミツ -

『職人とお客様を結ぶ色』をテーマに運営しているARTOCUには、既存の色名では表現しきれない、個性豊かな色があります。そして、その色を染め上げる職人たちもまた、十人十色。

そんな彼らの”色”を引き出すインタビュー企画
『ARTOColors.』

今回お話を聞く職人は、研究熱心で行動力抜群のバラミツさん。プロフィールには書ききれないそのひたむきなお人柄を深掘りします。

ぜひ、ごゆっくりお楽しみください。

ハマって、学んで、繋がっていく

職人 バラミツ

  

1.ハマって、踏み込んで

-幼少期はどのようなお子さんでしたか?

動物が好きでポニーテールだったからか、将来の夢が「馬になりたい」でしたね。でもまあ、挫折しまして笑
幼稚園に入るとピアノを習い始めたのですが、楽譜に絵がたくさん描かれていて、いつの間にかピアノよりも楽譜を使っての塗り絵に夢中になってました。その中にゾウの絵があって、肌色とか青とかオレンジとか、いろんな色で塗ってたんですよね。そしたらそのゾウを見た親が、すごく色々な色のグレーの色鉛筆を買ってきてくれたんです。グレーなのに色がいっぱいあることがすごく衝撃的で、「色って、明度や彩度の違いによってさまざまに派生するんだ」ということを初めて理解したような気がします。その出会いが、色を塗ったり、絵を描いたり、自分のモノ作りの始まりだったような気がします。それから物心がついた頃には「将来、何かしらのモノを作りたい」と、思っていました。


-他にもハマっていたものはありますか?

野鳥にどハマりしていて、鳥のペーパークラフトを沢山作っていました。田舎だったからか身近に動物がいて、昆虫とかも全然平気で。それから、牛も好きでしたね。うちは雛祭りになると雛人形を飾っていたんですが、下段にある牛車の牛をすごく気に入っていたんです。なので雛人形が飾られるようになるとあの牛だけ持ってきて、ベッドのそばに置いて……他の飾りがしまわれても、数日は一緒に寝てました。実際の牛も近所の牧場へ見に行ってましたし、写生会でモチーフに選んで描いたりして、今考えると相当好きでしたね笑
モノ作りもずっと好きだったので「モノを作る仕事をしたい」とは思い続けていましたが、どんなモノを作りたいのかが漠然としていたんです。なので高校は普通校に通って、どの方向性に行きたいのか模索してから美術系の大学に進学しました。

-大学ではどのようなことを学ばれましたか?

デザインを専攻していました。高校から予備校にかけて音楽やバンドが好きだったので、CDジャケットのようなグラフィック作品に興味があったんです。在籍していた科では立体、グラフィック、テキスタイル、というのが分かれていなくて、すごく色々なことをやりました。石膏像を作ったり、日本画などのさまざまな表現を経験しながら、平面か立体か進路を決めていく感じでしたね。入学した時は絵に進もうと思っていたんですが、だんだん形のあるモノにすごく興味が出てきて、学生生活の後半くらいからはずっとアクセサリーや立体物を作っていました。世の中には素敵なモノが色々ありましたが、自分が欲しいと思えるモノがなくって……。なので自分が欲しい物を1個1個作っていましたね。

 

2.日々、学びの連続


-ご卒業後はどのような進路にすすみましたか?

卒業してすぐ造形作家になりました。カテゴリとしてはアクセサリーが中心でしたが、普段使いのアイテムというよりは、ブローチでもネックレスでも結構大きめのものを作っていましたね。作家活動と並行しながら、ワークショップのお手伝い、子供の工作教室、クラフト用の材料作り……と、モノ作りが好きな人のための仕事もやっていました。「個人」でのモノづくりに携わっていく中で、会社規模でのモノ作りに興味が湧いてきて。個人制作では自分で素材を染めていたので、「染色 求人」で検索してみたらyuhakuが出てきました。そのほかは染料メーカーの受付事務の募集が多かったんですよね。なので、「染色」の技術や製作に作り手として携われるyuhakuに入社しました。

-実際に飛び込んでみた「染色」の世界はいかがですか?

求人を見ていて、yuhakuの「排水が出ない」と、いうのが印象的だったんですよね。幼少期から動物が好きだったので、環境問題には興味があって……。実際にyuhakuの染色をやってみると、水を大量に使う一般的な方法とは全然違う上、本当に排水が全く出ないので驚きました。また、入社するまで革については全く知らなくて、「革製品は高くていいモノ」くらいのイメージしか持っていなかったので、覚えることがたくさんあって最初の頃は楽しいけど大変でしたね。

-入社した頃と今のご自身を比べて、いかがですか?

入社してから1年半くらい経ちますが、1つ調べると知らないことがどんどん発見されるので、知りたいことや学びたいことが時間と共に比例して増えています。たとえば素材の特性や牛の生態とかって、知らなくても日々の業務はこなせるけど、知識があればいつか活かせる日がくるかもしれない。社外の講習会に行くとその道に何十年と携わっている方がたくさんいらっしゃるので、そういった方を基準にすると自分は全然まだまだだな、と思います。なので、覚えることも学ぶことも多いですし、入社した頃の自分を振り返る余裕もいまだにないですね。

-学びの中で、印象的だったことはありますか?

入社して2日目のことなんですけど、先輩から、傷のついた革を直すように言われたんですよ。とりあえずやってみるのですが、どういう状態が「直った」かわからないので、「この作業はなんなんだろう……どこがゴールなんだろう……」と、戸惑いながらも1日中やっていましたね。でも、今の自分は仕上げや磨きなどの工程に対して「これがゴールだな」という感覚がちゃんとあるので、「わかるようになったなあ」と思います。

-yuhakuの製品を染める上で、どのような点を大切にしていますか?

シリーズごとのコンセプトです。yuhakuのアイテムはシリーズごとにコンセプトがあるので、自分なりに理解して、染めるアイテムによって色使いやグラデーションの入れ方で表現しています。それから、初めて作業をやった時の感覚は大切にしていて、仕上げをやった時のことは今でもよく思い出しますね。最後の工程なのでめちゃくちゃ緊張するんですよ。「こ、こ、これやるんですか?!」みたいな笑
その震えるような緊張感は今でも忘れないようにしています。量産品の生産って、慣れてくるとどうしても「早く終わらせよう!」となりがちですが、そういう気持ちで作業をすると失敗に繋がりますし、良いものができないと思うんですよね。だから初めての時の良い意味で怖かった気持ちは忘れないようにしています。
 

3.学びを、カケラに


-『氷割れ』の制作について教えてください

yuhakuの生産で学んだことを自分の形で表現できたらいいな、と思ったのが制作のきっかけです。yuhakuの革って銀面(※)のみを染めるので、透明感が出るんですよね。その「透明感」が染めの特徴の1つだと思うので、コンセプトのポイントにしました。考えているうちに「氷」が連想されて、透明感とは対極的な革という素材の上で氷が表現できたらユニークだな、と思いました。なので艶出し用のコーディング剤などは使わずに、染めのみで透明感を描写しています。
(※革の表面のこと)


-制作はどのように進めていきましたか?

革を研究しながら進めていきました。この作品に使用しているのはクロム鞣し(※)の革なのですが、タンニン鞣し(※)の革よりも日焼けがおだやかだと言われています。それを確かめるために、「日焼けテスト」として真夏の紫外線の時期に、窓に張って3ヶ月くらい経過を見ました。実際に日焼けの様子を見てみると、染色は薄くなっていて、革自体は陽が射したクリーム色っぽく変化していました。「氷割れ」というのは江戸時代から親しまれてきた文様の1つなのですが、氷が割れて春になることから「春の訪れの象徴」だと考えられているんですよね。なのでクロム鞣しの日焼けによって、時間の経過と共に移り変わる表情が表現できていいな、と思って素材に選びました。
(※鞣しには主に、植物性のタンニンを使用する方法と、化学物質のクロムを使用する方法とがある)


-表現上でのポイントはありますか?

なるべく無駄なく革を使えるように、普段yuhakuの製品基準では避けている部位も取り入れています。『氷割れ』では革のキズを活かして氷の亀裂を表現しているので、キズの具合によって異なる氷の表情をお楽しみいただけたらな、と思います。染色面では、経年変化を加味して染めている点ですね。テストで、日焼けをするとあたたかみのある表情になることが分かったので、今はちょっと寂しそうな色味に見えても、あえて寒色系の色を多く使って染めています。差し色のピンクはもっと強く入れた方が個人的には可愛いのですが、今後の日焼けを考えるとこれくらいがちょうど良いのかな……と、思っています。

-お仕事や研究による様々な学びを活かして制作されたんですね

去年から研究を続けてきて、自分としてはもっと色々実験したいくらいだったんですけど笑
今回、ARTOCUの企画で「フラグメントケースのカケラでピアスを作る」と聞いて、「氷のカケラがピアスになったら素敵だな」と思ってとうとうデビューさせてもらいました。

4.そして、繋がる場へ

-作品づくりはどのようなものからインスピレーションを受けていますか?

つまらない回答になってしまいますが、「日々の生活全部」ですね。普段、自分の制作もしている中で、生活の全部がモノ作りに繋がるなと感じています。たとえば食事なら「あの時食事したあのお店のあのお皿の色」とか、こうやってお話している時も、その時はなんとも思っていなくても、後から振り返った時にその先の何かに繋がったり。周りに多趣味な友人が多いんですけど、観劇でもなんでも、誘われたら一度は飛び込んでみるようにしています。そこで何が待っているか分からないですし、その時に見て感じたことがいつか何かにハッと繋がることもある。学生時代の制作メモを今見返して、10年越しに作れた、なんてこともあったりするんです。なので何が繋がるか分かりませんし、日々の生活全てがモノづくりに繋がっている感じがします。

-個人でやられてきた立体と、ARTOCUでの平面。作品を制作する上で違いはありますか?

「ものをよく観察する」と言った、制作における基本的な考え方はあまり変わらないですね。ただ、立体と平面とではどこを切り取るか、どこを抽出するか、というのが違いますね。立体物を作るときはまるまるリアルに作りますが、平面だと「色」や「要素」だけを抽出することが可能なので、今までできなかった新しい切り取り方ができる感じはありますね。たとえば鳥なんかは立体でも作ってきましたが、羽の色や特徴だけを拡大して抽出するとなると平面の方が向いているな、と思います。そういう意味で、形の特徴にとらわれない表現が平面ではやっていけるといいですね。

-バラミツさんにとって「色」とは

「自分だけのおまじない」的なものかなあ、と思っています。今は「パーソナルカラー」という言葉も言われたりしていて「自分のもの、パーソナルなもの」っていうのが色に関するキーワードなのかな、と思いますね。いずれにせよお守りみたいに、ポジティブなものだと思っています。自分の好きな色を身につけると元気が出たり、落ち込んだ時に好きな色の花を置いて癒されたり。いわゆる「推しカラー」とかも、必ずしも自分の好みでなくても「推しの色」だと思って身につけると気分が上がったり。なので、他の人には分からなくても、自分にとって大事なものが「色」なのかなあ、と思います。

-ARTOCUでも職人の皆さんそれぞれに「色」の意味がありますね

最近、面白いことを知ったんですけど。四柱や五行に基づいた占いで、そこでは水を表す色が「黒」だったんですよね。自分のラッキーカラーのようなものとして知ったんですが、「水なのに黒なんだ」というのがまず衝撃的で。でも、よく考えてみると、夜の海って黒いしなあ、とか、なんだか納得して。なので、学ぼうと思ったら色々な見方があって、奥が深いです。

-今後、ARTOCUをどのような場にしていきたいですか?

ARTOCUが立ち上がる時、企画コンセプトとして「職人が個性を出して、楽しくやれるのがいい」と、言ってもらったんです。それはすごくありがたいことなんですが、「楽しい」ってどういうことだろう、と考えた時に、関わってくれる人みんなが喜びを感じられるといいな、と思ったんです。地球では今、環境問題が深刻化していて、牛が排出するメタンガスは地球温暖化の一因と考えられていますよね。対策として牛を大幅に減らすことは簡単かもしれませんが、その後の牧畜や、食肉や、私達の携わっている皮革など、それらを生業にしている人たちはどうなっちゃうんだろう……と、考えたりもします。ARTOCUは今後も色々な人が関わってくれると思うので、革の生産者の方だったり、縫製の方だったり、企画の方だったり、関わる多くの人に生産する喜びのある、そういう意味で「楽しい」企画になるといいな、と思います。

-これからやってみたい制作などはありますか?

今はジビエレザーに興味があって、いわゆる「害獣」と呼ばれているエゾシカやキョンの革が使えたらいいな、と考えています。生き物を無駄にしないという意味もあるし、お客様がそういう問題を知るきっかけにもなるかな、と。もっと原点に帰るとお肉を食べて、その革がアイテムになって……というサイクルを体験できたりとか。私は入社して勉強するまで、革が「食肉の副産物である」ということも知らなかったので、モノが素敵というのはもちろんですが、モノを通じて何かを知るきっかけになったり、学びに繋がる場になったらいいな、と思います。

 

 ARTOColors.
- Color is in the eye of the beholder -

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

いかがでしたか?
今回は染色職人バラミツの「ひたむきなモノ作り」を深掘りするインタビューでした。
今後もARTOColors.では職人たちの持つさまざまな”色”をお届けしていきます。
次回もお楽しみに。

 

お客様と職人を結ぶ色が、暮らしを豊かにする
ARTOCU