ARTOColors. -pipin-

『職人とお客様を結ぶ色』をテーマに運営しているARTOCUには、既存の色名では表現しきれない、個性豊かな色があります。そして、その色を染め上げる職人たちもまた、十人十色。

そんな彼らの”色”を引き出すインタビュー企画
『ARTOColors.』

今回お話を聞く職人はpipinさん。 

仕事に対してストイック。「自信がない」と言いつつも、美しい染めを生み出しています。普段は多くを語らないpipinさんの、お仕事の秘訣とは……?プロフィールには書かれていない、その硬派なお人柄をARTOCU運営チームが深掘りしてきました。

ぜひ、ごゆっくりお楽しみください。

完璧を追求する。どこまでも、いつまでも。 

染色職人 pipin

-今日はインタビューという形ではありますが、pipinさんにはリラックスしてお話してもらえたらと思います。

あんまり話すことないかも……。

-そう言わずによろしくお願いします!笑

はい……、がんばります。笑

1.『モノ作り』に没頭した子供時代


-幼少期はどんな子でしたか?

小学校の頃からずっと、美術や図工が得意で。自分の分だけじゃなくて、人の分までやるくらい好きでした。たとえばお手本があればきっちりその通りに作りたいので、自分の作品じゃなくても似てないとすごく気になるんです。ところがクラスメイトが作っているものを見てみると、みんなあんまりお手本通りじゃなくて、そういうものを目にすると、とにかく気になる。
一度気になり始めるといてもたってもいられなくて「やりたい!」と、人の分まで手伝ってました。笑


-授業以外では、どんなものを作ってきましたか?

絵を描いたり、趣味で色々作ったり。とにかく、これ作りたい、と思ったものはなんでもイチからやってみます。たとえばシルバーアクセサリーだったら、ワックス(※)を削るところから始めて、鋳造は業者さんに頼んだりとか。(※シルバーアクセサリー作りの原型となる蝋のこと。)
あとは……、ベルトに財布をつけようと思ったことがあったんですけど。そういうポーチみたいなものを、財布が見えるデザインにしてレザーで作ってみたりとか。それは普段使いしていたらバイト先で「作ってほしい」と頼まれたりしたので、結構よくできてたのかな……、と思います。小さなものだと羊毛フェルトとかも得意ですね。スヌーピーとか、自分の好きなキャラクターは完璧に作れます。でも、よく知らないキャラクターを頼まれたりすると完璧に作れる気がしないので、放り投げたくなります。笑

-とにかく出来栄えにストイック……!
-そんな風にモノ作りをしてきて、職人の世界にはどのようにして足を踏み入れましたか?

学生の頃からモノ作りの仕事につきたい、とは思っていたのですが、特に「これを作りたい」という具体的な目標はなくて。当時は「職人」を募集するような求人も見当たらなくて、そこで1度諦めました。なので学生の時に飲食店で働き始めてからは、ずっと飲食業界で働いていました。
30歳を過ぎたのをきっかけに、他の仕事がしたいと思うようになって、「モノ作り」の求人にいくつか応募してみたんですけど、書類選考で通っても、いざ面接へ行くと年齢を理由に断られたりして……。そういうことがあったから、職人になるには早いうちでないとダメなんだな、と思いました。だから諦めよう、と思ったのですが、やっぱり……どうしてもモノ作りがやりたくて、最後にもう1回だけ、と思って求人を探してみたら、yuhakuが出てきました。
今まで何度も断られてきて、またダメだろうな、と感じながらもとりあえず面接に行ったらまさかの受かって……、入れました。


-諦めずにチャレンジし続けたからこそ、yuhakuとの出会いがあったんですね。

何度もダメだったので面接には良い印象がなかったのですが、yuhakuでの面接は楽しかったですね。面接してくれたのは社長だったんですが、最初からすごく笑顔で、気さくな感じ。いつもだったら緊張して全然喋れないのに、自然に喋れました。
「お酒を飲むのは好きですか」と質問されて「好きです」と答えたら、話が盛り上がって、そこから新年会に誘ってもらえたんです。結局都合が合わなくて参加はしませんでしたが、最初からそんな風に誘ってもらえて、あたたかみを感じました。入社してからも思いましたが、みんな仲が良くて、アットホームですね。学校みたい。笑


-実際にモノ作りに携わってみて、職人の世界は、いかがですか?

今年で入社して4年目なんですけど。今でも『全然できない』って思ってます。周りの人からできてるって言われても、納得できない。これまで色々な先輩たちから「もっと自信を持って」とか「大丈夫だよ」と、言われてきました。でも、自信を持てることが本当に一つもない……。自分の中で基準があって、そこに達してないんですよね。

-ご自分ではどのような基準を設定していますか?

感覚的なことだけど……何枚染めてもまったく同じように染められる……、とか。そういう意味では、自分の染めのほとんどはまだまだ完璧じゃないって思います。だからこそ、褒められても納得できない。自分がいいと思っていないものを「いい」と言われても、同じように感じることができないんです。

2.実はやりたくなかった?! でも、気づいたら、ここに。


-ストイックで慎重派なpipinさん。Artocuでのご経験はどのように感じていますか?

本当は、Artocuも参加するハズじゃなかったんです。日々の染めですら納得できていないから、自信がなくて……やりたくなかった。なのでmakuake(※Artocu立ち上げ段階の企画)が始まる時も、ハッキリ断りました。それなのにある日、染色室での研究の時間に、全員makuake用の色出しをすることになりました。『やらないのになんで???』と思いながら染めていたら、『オーロラ』(※makuakeに出品していた作品)ができたんです。そしたらそれが運営チームの目に留まって、makuakeで掲載されることになりました。でも、『オーロラ』が掲載されて、お客様に選ばれていくのを見るうちに、「自分の作品を選んでくれる人がこんなにいるんだ」という驚きがありました。それで、もし自分が好きなように染めて、選んでくれる人がいたら嬉しいな、と思って……、気づいたらここにいました。笑

-そういえば、Artocuの署名に使っている『pipin』というお名前の由来は……?

愛犬の名前です。出会いはペットショップでした。ある日突然、親が「売れ残りのビーグルがいるから見にいこう」と言ってきたんです。でも、いざ一緒にお店に行ってみたら、ビーグルの子はずっとソッポ向いてツンとしていて、あんまりピンと来ませんでした。そこでふと、下のケースの子を見てみたら、目が合った瞬間にその子が目を輝かせて尻尾をふってくれたんです。一目惚れして、「この子の方がいいよ!」と一瞬で決まりました。笑

-運命的な出会いですね! その子のお名前がピピンだったんですね。

映画『ロードオブザリング』に、ピピンとメリーっていう仲良しな2人組が出てくるんです。ペットショップでピピンを見たときに、なんだかその子に似てる気がしたんです。ちょっとおバカな感じとか。笑
そんな理由でピピンになったんですけど、ピピンが来たからにはメリーもいたらいいなとなって、結局メリーも探しました。数ヶ月後にはメリーとなる子にも出会えて、ピピンとメリーの子も産まれました。ちなみに名前はソフィーです。

-pipinさんが生き生きとお話しされている……!!笑
-ピピンさんとメリーさんのことを大事になさっているのが伝わってきます。

それで実は……、makuakeで自分の名前を決めなくてはいけないときに、ちょうどピピンが亡くなったんです。それがすごく……、今も立ち直れてないんですけど。その1年前にメリーも亡くなっていて、本当はどちらの名前もつけたかった。でも、ピピンには何もしてあげられなかったな、という思いが強かったので、ピピンの名前をもらうことにしました。

-そんな想いが込められていたんですね……。

気持ちの整理はまだつかないけど……、今はこの名前にして良かったなって思います。知人や友人がArtocuの自分を見て、「何、pipinって」と、笑ってくれる。それだけでちょっと嬉しいんです。そう考えたら、ピピン・メリーにすればよかったな、と思いますね。すごいメルヘンだけど。笑


3.『完璧』のその先で、新しい自分に会えると信じて。



-そんな風に「気づいたらここにいた」というArtocuでの作品作りについて聞かせてください

yuhakuでは自然界にあるような色を染めることが多いですが、個人的には淡い色……中でもパステルカラーが好きなんです。Artocuが始まる前から淡い色の染めを作ってみたいな……と密かにずっと思っていて、そんな風に自分のやりたい色を優先して染めたのが、『7colors』です。革の上で虹を表現したらどんな風になるだろう……と思いながら染めたこの作品は、
好きなアーティストであるAcid Black Cherryの曲からインスピレーションを受けています。
虹にもさまざまな色味のものがありますが、ここで表現した虹は、夢の中で見ているような、そんな淡い染めになるように意識しました。


-『7colors』も『目覚め』も、pipinさんならではのなめらかで淡いグラデーションが印象的でした。

なめらかに染めること、には特にこだわっています。yuhakuではグラデーションをムラのような重なりで表現しますが、個人の製作ではその境目ができるだけ出ないように染めています。色が自然と移り変わっていって、全てがムラなくなめらかに繋がっているような完璧なグラデーションが理想です。ただ、自分の中で『7colors』と『目覚め』は対極にある作品なんですよね。自分のやりたい色は、どちらかというと『7colors』のような、淡い色味なんです。
でも、お客様に好まれるのは、yuhakuで人気の高い青系なのかな、という感触があって。自分のやりたい色と、好んでいただける色との兼ね合いが、難しいな、と思います。せっかくなら、どちらも兼ね備えた色が作り出せたらなあ、とは思うのですが……。


-『目覚め』はpipinさんが初めてオーダーを受注した作品となりましたね。
-個人で制作をしたご経験は、いかがでしたか?

とにかく不安で……、沢山悩みました。最初にオーダーをいただいた名刺入れの制作は、提出の2日前にはひと段落していたんですが、どうしてもすぐには出せませんでした。『本当にこれでいいのか?』『お客様のご期待に添えるものになっているか』と、2日間悩みに悩んで……。注文が入るのは嬉しいけど、不安も同じくらいありました。
お客様が見て『良い』と思っていただいた点に忠実に染めたい、とは思うのですが、それがなかなか難しい。そもそも、HPのモニタで見る色と、本物の染めは色合いや色調が微妙に異なります。また、色サンプルとして平面で見た時と、製品として立体で見た場合でも印象が違う。だからいざ”製品”を意識して染めるときに、どんな風に染めるのがいいんだろう、と立ち止まることが多々あります。もちろん、サンプルの『色』を優先して染めてはいるのですが、
それでもやはり、製品として仕上がったものは1つ1つ表情が違うので、同じじゃないけどそれでいいのかな、大丈夫かな……、と不安です。笑


-製品の向こう側のお客様のことを想って染められる、pipinさん。
-そんなpipinさんにとって色とは。

こういうことを言うのは苦手なんですが……。『心を表す』って、感じがします。
色って、気分によってどんな色を選ぶかが変わってくる。服を選ぶ時もそうだけど……、天気がいいだけで気分が変わって明るい色が着たくなる。そんな風に自分の気分が色に出ることもあれば、色の方が心に影響することもあります。暗い気持ちのときに爽やかで癒されるような色を見た時は、心も穏やかになりますね。

-まさにpipinさんの作品のような。

そうなっているかは分かりませんが……。ちょっとでもいい気分になってもらえたら……、と思います。

-色々な完璧を探究しながら、美しい染めを生み出すpipinさん。
-今後Artocuを、どのような場所にしていきたいですか?

そうですね……。新しい何かを作っていけるようになりたい、と思います。自分には、想像力があまりなくて……、コンセプトや、やりたい表現とかがいつもあるわけではない。表現自体も他の人に比べたら普通すぎるというか……工夫がないように感じます。だからそんな自分を少しずつ変えて、新しい自分を見つける場所……になったらいいな、と思います。と、思うのにいざ色出しするといつもと同じようなふんわりした感じのものになっちゃうんですけどね。これから先、なんとか見つけていきたいです。

-新しいpipinさんに会えるのを、楽しみにしています!
-本日はたくさんお話していただき、ありがとうございました!

ありがとうございました。

ARTOCOLORS.
- COLOR IS IN THE EYE OF THE BEHOLDER -


最後までご覧いただき、ありがとうございました。

いかがでしたか?
今回は染色職人pipinの理想を追求するモノ作りを深掘りするインタビューでした。
今後もARTOColors.では職人たちの持つさまざまな”色”をお届けしていきます。
次回もお楽しみに。



お客様と職人を結ぶ色が、暮らしを豊かにする
ARTOCU