ARTOColors. - アツミ -



『職人とお客様を結ぶ色』をテーマに運営しているARTOCUには、既存の色名では表現しきれない、個性豊かな色があります。そして、その色を染め上げる職人たちもまた、十人十色。

そんな彼らの”色”を引き出すインタビュー企画
『ARTOColors.』

今回お話を聞く職人はアツミさん。いつも明るく気さくで、ムードメーカーなアツミさん。そんなアツミさんのエネルギーは、いったいどこからくるのでしょう? プロフィールには書ききれないそのチャーミングなお人柄を深掘り。

ぜひ、ごゆっくりお楽しみください。

心のアンテナが「ピン!」となるモノ作りを目指して

職人 アツミ

 

1.さまざまな経験を積んだ20代



-本日はアツミさんのありのままの姿をあれこれお聞きできたら、と思います。

赤裸々に喋りすぎちゃうかも。笑
「その情報はいらない」ってなったら、カットしてください。笑

-おまかせください。笑
-ではまず、プロフィールについてお聞かせください。

ブラジルで生まれて、生後1年で日本に来てからは、日本で育ちました。母は血筋的に日本人なんですけど、生まれも育ちもブラジルなんです。 ブラジルって元気なイメージとか、カラフルだったりとか、派手なイメージがあると思うんですけど、母もまさにその通りの人。 色に対してすごくこだわりがあるし、色があるものが好き。それもあって子供の頃から色があるのが当たり前、という感じでした。 なので、染色職人になったのは母の影響も強いですね。

-では、早いうちから色に携わるようなお仕事を志望なさっていたんでしょうか?

実は、幼少期はまったく違う職業を目指していました。 それが、カメラマンなんですけど。当時は動物が好きで、最初は獣医さんになりたいな、と思っていたんです。 でも、調べていくうちに「すっっっごい大変」ということがわかって、自分には無理だ、と。笑
そしたら小学校の自由研究で写真を撮る機会があって、そこからカメラに興味を持ちました。
だったら、カメラも動物も好きだから動物写真家になろう、と思って、生き物をメインにパシャパシャ撮っていましたね。 写真学校に入ったくらいから、モノを写真で表現する方が楽しくなっていって、動物はだんだん撮らなくなっていきました。


-ご卒業後は、何を?

カメラマンのアシスタントを2年ほどやりました。でも、最近の写真って撮るのは一瞬、あとはパソコンで色調整をカチャカチャやるっていうのがメインで……。そこで気づいたんですけど、私、指先の感覚を感じながら何かをするっていうのが好きだったんですよね。だから陶芸も好きだし、趣味で描く絵に関しても指に絵の具をつけて直接描いたりしていました。そういうのがやりたかったから、なおさら写真での表現は違うな、と気づきました。あとは生活者的な視点で、写真は業界的に厳しいな、という風にも思えました。今はスマートフォンがあれば誰でも綺麗に撮れる。だから、写真で食べていくのは選ばれた人にしかできないな、と。それもあってカメラはちょっとやめちゃいました。

-そこからどのようにして染色職人さんになったのでしょう?

カメラマンのアシスタントをやめてからも、モノづくりに関わる仕事をしたいなっていうのがずっとありました。当時は飲食業界で働いていたんですが、日々のメニューを作ったり、ていう部分が、やっぱり、やっていて楽しくて。そんな中、今から2年前くらいに、一番長くやっていた飲食店を辞めることになったんです。ものづくりや職人の世界の経験は「早ければ早い方がいい」とよく言われる。だから年齢的にも30歳が近くなるっていうことで、1回挑戦してみてもいいかな、と思いました。面接を受けるだけ受けて、落ちたら飲食に戻ればいいか、と。それで、yuhakuを受けたら採用が決まりました。

-ご自分の人生の中でチャレンジの一環だったんですね。

20代前半だったら色々やってみて面白くなかったらやめる、ができるけど、30歳って色々考える。長く働ければその分、1つのことを深いところまで突き詰めていけるし、気持ちの面でも安定できますよね。今後の生き方を考えた時に、昔の日本みたいに「同じところに長く勤める」っていうのが良いなと思いました。

2.憧れの、『モノ作り』の世界へ

    -そんな風にご自身の方向性に向き合いながら辿り着いた職人の世界。
    -実際に足を踏み入れてみて、いかがですか?

    染色の”直”でやってる感じというのは、すごい楽しいですね。指先の感覚を、こう……研ぎ澄ませながら染めるのは、筆を使って描くよりももっと直接的ですし。自分のやりたいことと、もうめっっっちゃ近しいです。

    -イメージ通りだったことや、ギャップがあれば教えてください。

    思った通りだったことは、1つのことに集中してやれること。飲食はホール担当だったんですけど、全部を見なきゃいけない。それに比べると、1つのことに集中してやれる。と、同時に、想像はしていたけれども、想像以上にやっぱり大変。集中力と、根気とが。中でも一番びっくりしたのが、ずっと染め続けるために必要な筋力ですね。作業をしていると、肩とか指とか結構痛くなるし、パンパンになる。今でも翌日は筋肉痛になったりもします。ベテランの先輩でも大量にやると次の日には筋肉痛になっているみたいです。意外と肉体労働なところもあるな、と思います。

    -精神力と肉体労働。一定のコンディションを保つために、気をつけていることはありますか?

    私、作業しながら音楽を聴くのが好きなんですけど、染色に関しては『音楽を聴かないこと』です。音楽を聴いているとリズムに乗っちゃうので。笑
    染色って陶芸と一緒で、心のブレとかムラとか、気分が出ちゃう。たとえば少しでも「ヤバい、急がなきゃ」と思うと、一気に失敗して、修正に時間をとられてしまう。 同じものを染め続けるには心を無にしていないとできない。まだ経験の浅い私は、だと思いますが……。だから最近は染めるとき、イヤホンをしています。音楽を鳴らさずに、なるべく音を遮断できるように。


    -集中力を保ちながら、同じクオリティのものを生み出していく。まさに職人仕事の醍醐味ですね。

    私、5月で丸1年経ったばかりなんですけど、生産スケジュールの関係もあって、1年経っても初めてやることが多いんです。だから全然まだまだで。そういうのを教えてもらったり学んだりしていく中で、先輩方はすごいなあ、一人前の道のりはまだまだ遠いなあ、と思います。

    3.自分だけの"色"を探して


    -そんなアツミさんにとって、ARTOCUでのご経験はどのようなものでしたか?
    -『power』の制作について、お聞かせください。

    『power』は去年の12月からやり始めて、色見本を提出したのは1月末ギリギリでした。作業をしていて、「これだ!できた!」と思うことがあっても、次の日職場に来て改めて見ると「違うな」となる。提出までに「これだ!」が2回あったんですけど、どちらも翌日見返してみるとやっぱり違って……。提出の最終日になって、最後の最後にワーッ!ってなってやってたら、ようやく「きた!これだ!」と思える1枚が完成したんです。なのであの1枚に関しては、いつ見ても、今になって見てもめっちゃカワイイなと思います

    -あの色を見たときに、アツミさんっぽさを感じると同時に、確かにエネルギーが満ちている印象を受けました。

    ネタばらしをすると、実はあれはインスタグラムのアイコンなんです。笑
    何を染めようかな、と携帯を眺めている時に目に入ったのがインスタのアイコンでした。 最初はアイコン通りにそっくりそのまま染めてみたんですが、色を模倣しただけでは「欲しい」と思えないな、と感じたんです。そこから自分なりに色の出し方をアレンジしたりして、その作業に2ヶ月間かかりました。完成したものを見て、自分の中でどう昇華したのかを改めて考えたときに、自分の素の部分に近いなと思いました。 色の感じとかポップな感じ、パワフルな感じが『自分』を一番表現できたなと。だから1枚目の作品としてあの表現を持ってこられてよかったなとは思いますね。


    -明るいだけではなく、秘められた力、という感じが、ムードメーカー、だけど研究熱心なアツミさんにぴったりな気がします。
    -インスピレーションはSNSの他に、どのようなものから受けてますか?

    SNSの他には……ペットショップ、特に熱帯魚ですね。昔ベタを飼ってたんですけど、ベタってすごくきれいなんです。めちゃめちゃ色の種類があるので、その色合いはいつか染色でやりたいと思っています。あとはアクセサリーとか。たとえばピアスの色合いを見て、どうやったらこの色を染色で表現できるだろう?とか。飲食時代にメニュー表を作っていく中で、デザインに興味のあった時期があって。中吊り広告なんかを見ては、色の組み合わせによってどう見えるかを分析したり、かわいい色の組み合わせを意識してた時がありました。いろんなところにヒントのあることを気づけて、それが今にも繋がっているな、と思います。

    -そういえばプロフィールには、「生まれ育った環境で得た、感性や感覚を生かした表現をしていきたい」とありましたね。
    -そうした感性もモノづくりのヒントになっていますか?

    実は、自分について考えてみると、ブラジル人ではあるけども、日本で育ったからブラジル人ではなくて。アイデンティティ的な……、それが自分はどっちなんだろう?って悩んだ時期もありました。でも、母から受け継いだブラジル人の感覚と、育ってきた日本の色の文化、そこがなんだかんだ自分の嗜好にバランスよく出てるのかなって思います。たとえば、日本の伝統文化では色ごとに意味合いがありますよね。日本のそういう、一つ一つのところに意味合いを持たせるところが結構好きなんです。また、主張はしてないのに、すごく惹かれる、みたいな引き算の配色も日本の色使いにはあったりする。そういう日本的な色の感覚と、母国ブラジルの色の感性。どちらもARTOCUで表現できたら、と思います。

    4.明日の「カワイイ!」に出会いたい


    -ARTOCUでは次にどんな表現をしていきたいですか?

    次は和寄りのもの、日本っぽいものもやっていきたいなあ、と思います。今回がパンチの強い色だったので、穏やかに行こうかなと。でも、季節を考えて染めるとなるとまだ夏っぽい染めがいいかなあ、と思ったり。

    -そう考えると、色にはさまざまな表情がありますね。
    -アツミさんにとっての色とは、どのようなモノでしょう?

    心のバランスをとってくれるもの。『今こんな気持ちだからこういう色がいいな』っていう自分の心に、色が寄り添って、バランスをとってくれる。好きな色を眺めてるだけでも落ち着きますし。だから、今後私の作品を手にとってくれるお客様にもそんな風に思ってもらえたら、と思います。元気のないときに私の染めた色を見て、少しでも気持ちが上向きになって欲しい。たとえばお気に入りのアクセサリーをつけていると、ふとした瞬間に「えっ、カワイイ!」となる。心が動くと、思わず言葉が出ちゃう。カワイイ!とか、カッコイイ!とか。あの瞬間がいいですね。それをお客様にもお届けできたら、と思います。その時イイなと思って買ってそれで終わりじゃなくて、何度見てもイイなと思えて元気の出るもの。

    -『power』についても『次の日までいいと思えるか』にこだわってましたね。

    すごい気に入ってるものって、持ってるだけでテンション上がるじゃないですか。心の中で「ピン!」と来たものはいつ見ても「ピン!」となる。自分はそういうモノが欲しくて。何度でもハッとなって、何度でも「カワイイ!」となるような。そういうモノを手に入れられた時は、嬉しくって、母にも何度も見せて、何度も同意を求めちゃいます。笑

    -そんな心動く瞬間を発信できるARTOCU。今後はどんな場所にしていきたいですか?

    将来的にはARTOCUがもっと独立していったらいいな、と思います。ARTOCUからyuhakuを知る人がいる、くらいの。笑
    あとは、yuhakuに属していない作家さんや職人さんとも関われたらいいな、とも思いますね。


    -まさに、色でのつながりが生まれる場所、ですね。

    まだ先でしょうけど、そうなったらいいなあ、と思います。そのためにもまずは、自分の色を気に入って手にとってくださったお客様が、それを見るたびにちょっとでも元気になってくれたらいいな、と思います。

    -いつもみんなを楽しい気持ちにさせてくれるアツミさんらしい素敵なメッセージ、ありがとうございました。

    ありがとうございました!

     

    ARTOCOLORS.
    - COLOR IS IN THE EYE OF THE BEHOLDER -

    最後までご覧いただき、ありがとうございました。 

    いかがでしたか?

    今回は染色職人アツミの『心動く瞬間』を深掘りするインタビューでした。
    今後もARTOColors.では職人たちの持つさまざまな”色”をお届けしていきます。
    次回もお楽しみに。

     

    お客様と職人を結ぶ色が、暮らしを豊かにする
    ARTOCU